宮入慶之助記念館

     
 


日本住血吸虫(♂♀)
日本住血吸虫は、人間や各種ほ乳類の血管内に寄生し、成虫は門脈系静脈内に雌雄が抱合して寄生する。
発熱、腹痛、脾腫、腹水貯留、虫卵による肝繊維化など、甚だしい症状を与える。他の人体寄生吸虫類と異なり、雌雄異体で、雄は体長9〜18mm、乳白色で、前体部に2個の吸盤がある。雌は15〜25mm、暗褐色で線虫のように細長く、前体部に微弱な2つの吸盤を持つ。中国、東南アジアにも分布し、各地で悲惨な風土病として多数の患者を苦しめている。
当記念館の標本を実際にご覧になると分かりますが、「こんな小さい虫が....。」と思うほど、注意して観察してみないと分からない虫です。
日本住血吸虫診療マニュアル(山梨県)より 独特の症状を示す地方病の病原体は?
広島県福山の医師、藤井好直が1847(弘化4)年に記した、「片山記」が最初の記録です。
1904(明治37)年、桂田富士郎は、猫の門脈から虫体を発見し、これを日本住血吸虫とし、これで感染源が特定されました。その後、藤波鑑は人体剖検例でこの虫体を発見しました。
感染経路は?
病原体は判明しても、感染経路は全く闇の中でした。
一体、人や動物はどこからこの寄生虫に感染するのだろうか?はじめは、飲料水が疑われました。(経口感染)
牛に長靴を履かせたり(経皮であるか?)、口袋をつけたり(経口であるか?)、ある医師は、流行地の田に自ら素足で入り、自分の体で感染実験をするなど、今では信じられないような試みが重ねられた末、日本住血吸虫の虫卵は孵化するとセルカリアに成長して、水中を遊泳し、ほ乳類の皮膚にとりついて皮膚から侵入(経皮感染)することが分かってきました。
中間宿主ミヤイリガイの発見!
 
セルカリアが経皮感染することがわかっていても、虫卵の孵化したものが、セルカリアになるまでが解明されていないため、この病を防除する方法がなく、日本住血吸虫の生活環解明は、悲惨な風土病に苦しむ住民の、命の叫びでした。
多くの研究者達の日夜を分かたぬ苦闘の中、九州・久留米地方を地元とする九州帝国大学の宮入慶之助と助手の鈴木稔は、同地方に流行していた日本住血吸虫病の惨状を目の当たりにし、この病気の根絶のために研究に着手しました。
宮入慶之助等は綿密な研究の末、「日本住血吸虫卵が糞便を介して水中に入り、孵化しミラシジウムになり、中間宿主である、ミヤイリガイに侵入する。ミヤイリガイの体内で成長して、セルカリアとなってほ乳類の皮膚から侵入し、成虫となる。」との結論を得て、最終的に生活環を解明しました。
この発見は、人類が日本住血吸虫病の防除が出来るようになったという理由ばかりでなく、全世界に棲息する同様の住血吸虫防除の端緒になった画期的な発見でした。世界の住血吸虫病に悩む人々にとっては、計り知れない意義のあることでした。
   

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