(抜粋)

宮入慶之助記念館だより (記念誌発刊特集号)5号
  宮入慶之助記念館    2006(平成18)年2月26日発行

住血吸虫症と宮入慶之助-ミヤイリガイ発見から90-
                               宮入慶之助記念誌編纂委員会編
                          九州大学出版会・B5判・290頁 5,775

発刊に際して       宮入慶之助記念館館長 宮入源太郎

かねてから計画していた記念誌「住血吸虫症と宮入慶之助」がようやく発刊にこぎつきました。初代館長の他界により館長を引き継いでから、多田名誉館長と今後のことを話し合う中で、記念誌を作ろうという話がまとまりました。
 記念館の設立趣意にもありますが、宮入慶之助に関する資料や知人が失せない内に、これを記録して後世に遺すことは記念館の任務であると考えました。
 また、国内では日本住血吸虫症が根絶されつつあり、防圧体制が次第に縮小されている現在、住血吸虫症に関する過去・現在を系統的にまとめて書物のかたちで残すことは社会的にも意義のあることとも考えました。
 この本は、つぎのような特徴があります。
1)            本書は単なる偉人伝や伝記ものではなく、一人の学者の業績がその後の社会に与えた影響、長年の業病を根絶させるために各界の人々が努力した様子、現在も続けられている研究や外国での努力の様子など、広い視野で記述されています。
2)            住血吸虫症に関する研究の歴史的な流れと、その中で宮入慶之助が日本住血吸虫の中間宿主カイを発見したことの学問的な意義について解説されています。
3)            長い間日本住血吸虫症で苦しんでいた3大流行地域である広島県片山地方、山梨県及び福岡・佐賀両県にまたがる筑後川流域で、この病気の安全宣言がされるまでの努力の軌跡がまとめられています。わが国における制圧の記録を、本書で鳥瞰することができます。
4)            住血吸虫に対する人間の身体内の反応やメカニズム、ワクチンの開発などの医学的な研究の最新成果が報告されています。自然界の本質に迫ろうとする学問の状況がわかります。
5)            海外の主要な感染5カ国での住血吸虫症との闘いについての最新状況が報告されています。わが国での住血吸虫症の予防や治療に関する成果は、この病気に苦しむ海外各国の人々に対して多大な貢献をしていることがわかります。
6)            住血吸虫症予防のキーポイントであるミヤイリガイの生物学的な研究成果と撲滅対策、現在も続けられている監視活動の最新状況が記述されています。
7)            宮入慶之助について、現役時代の活動の様子、その生い立ちや生涯、人間性、研究史でのエピソード、記念館開館までの物語などがまとめられています。
 この本は、総勢29名の執筆者の、この事業に対する深いご理解とご協力により完成されました。また、私共の記念事業に賛同され出版を引き受けて下さった財団法人九州大学出版会のお陰であります。
 これらの関係者の皆様に心からお礼申し上げます。また、この本の完成を見届けるように急逝された執筆者の一人であられる、故辻守康先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。
 この本を、多くの方々にご覧いただき、いささかでもお役に立つことを念ずる次第です。

      住血吸虫症と宮入慶之助  目次                    

〈第一部〉

日本に於ける住血吸虫研究の流れ・・・・・・・・・・・・・石井明(実践女子大学教授)

宮入慶之助と中間宿主カイ発見・・・・・・・・・・・・・田中 寛(東京大学名誉教授)

片山記から片山病の防圧まで・・・・・・・・・・・・・・辻 守康(広島大学名誉教授)

山梨県の住血吸虫防圧・・・・・・・・・・・薬袋 勝(元山梨県衛生公害研究所副所長)

筑後川の住血吸虫防圧・・・・・・・・・・・・・・・・・塘 普(久留米大学名誉教授)

日本住血吸虫症の病理形態学・・・・・・・・・・・・・・・・・

中島敏郎(久留米大学名誉教授)平田瑞城(久留米大学助教授)
    
住血吸虫に対する生体の防御機構・・・・・・・・・・・・・・大橋 眞(徳島大学教授)

住血吸虫症ワクチン・・・・・・・・・・・・・・・・小島荘明(国際医療福祉大学教授)

住血吸虫感染と体質・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平山謙二(長崎大学教授)

ケニアにおける住血吸虫症と防圧・・・・・・・・・・・・・・青木克己(長崎大学教授)

住血吸虫症と感染行動・・・・・・・・・・・・・・嶋田雅曉(長崎大学教授)ほか4名

中国における住血吸虫症・・・・・・・・・・・・・・・太田伸生(名古屋市立大学教授)

メコン住血吸虫症・・・・・松田 肇(獨協医科大学教授)桐木雅史(獨協医科大学講師)

フィリピンの日本住血吸虫症・脳症型・肝脾腫型の臨床と同症に対する挑戦

                     ・・・・・・・・林 正高(市立甲府病院前神経内科科長)

ミヤイリガイの生物学・・・・・・・・・・・・・・・・・・岩永 襄(広島大学助教授)

中間宿主ミヤイリガイの殺貝による日本住血吸虫症の制圧・・・・・・・

           梶原徳昭(山梨県衛生公害研究所部長)保阪幸男(前東京医科大学客員教授)

GPNで住血吸虫症流行を追う・・・・・・・・二瓶直子(国立感染症研究所客員研究員)    

〈第二部〉

九州大学における宮入慶之助・・・・・・・・・・・・・・多田 功(九州大学名誉教授)

住血吸虫研究史における人間ドラマー取材雑感からー・小林照幸(ノンフィクション作家)

慶之助とホタルと左京・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・清永 孝(歴史研究家)

人間・宮入慶之助・・・・・・・・・・・・・・・・宮入源太郎(宮入慶之助記念館館長)

宮入慶之助記念館の開館・・・・・・・・・・・・・宮入建三(宮入慶之助記念館研究員)

 関連資料:宮入慶之助の著作/宮入慶之助年表、宮入慶之助の書簡など/宮入慶之助に関する遺構

          宮入慶之助のアルバム

宮入慶之助記念館は、発刊を記念して当館に直接注文いただいた方に限り、特別価格4,600円にて販売致します。

編集後記

2002年の秋ごろ多田名誉館長と記念出版のことを具体的に話し合いはじめてから丸3年かかってようやく記念誌が完成して、この喜びを実感しているこのごろです。
 ここに至るまで、本当に多くの方々のご支援をいただきました。各界でご活躍の先生方がお忙しい中、原稿を送ってくださり、暖かいお言葉の添え書きがあったことに大変力づけられました。ともすれば弱気になる私を鼓舞して下さったのが多田先生でした。原稿とりまとめの際は、末弟建三に原稿入力や電子ファイルの取り扱いに奮闘してもらいました。校正段階では建三はじめ妹板倉キイや妻京子にも応援してもらいました。
 それでも人手が足らず、執筆者の一人で、かねてから研究員をお願いしている清永孝氏にも応援をお願いしました。この機会にお礼申し上げます。
 完成した記念誌を仏壇に供え、この事業の素地をつくってくれた亡き父母と、同じ墓に眠る慶之助の両親敬長とリウに報告した次第であります。         (宮入源太郎)